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ハルゥ・ニイ

ハルゥ・ニイ
名前ハルゥ・ニイ
年齢20歳
身長160cm
体重
職業神職者(プリースト)
性格のんびりしている。天然ボケ。

聖女と傭兵

ハルゥは、はっと気がつき、周囲を見回した。
喧騒に満ちた酒場の中で、ジョッキを両手に下げて突っ立っている。
「こんなことをしている場合ではないのです!」
ハルゥの悲鳴のような声に、酒場が静まり返った。
確か情報を集めようと酒場に入って、なりゆきでお店を手伝うことになり、そのままもう一週間。
光玉探しの旅のことをすっかり忘れていた。
「ああ、アルテナ様、お許しくださいませ。もう、二度と道草なんか食いません」
祈りながら、エプロンをはずし、店を飛び出すハルゥ。そのまま、走る。走る。
街を飛び出し、森を抜け、小川のほとりまでやってきて、ようやくとまる。
はあはあ、息を切らし、それから、ふと、荷物を全部忘れてしまったことに気がついた。
ペタンとその場に尻もちをついて、うむぅ〜、と低くうなる。
「どうして、こうも、ままならないのでしょうか」
もともとそそっかしいハルゥだが、旅に出てからというもの失敗ばかりしている。
パルツァル=メディチを出てから、もう3ヶ月もたつというのに、まだ大して故郷から離れていない。
なんだかんだで、寄り道ばかりしてしまうのだ。
ため息をついて、立ち上がると、ハルゥはとぼとぼと歩き出した。ともかく、荷物を取りに戻らなくてはならない。
大したものは入っていないとはいえ、無一文で旅をするよりはましだ。
いつのまにか、日は沈み始めていて、森に差しかかった時には、夜のとばりが降りていた。
ほー、ほー、ふくろうの鳴く声。森の中をつっきる小道を、こわごわと歩いていく。
木の葉の屋根を抜けてかすかに届く月明かりだけが頼りだ。
足元を、何かふさふさとしたものがかけ抜けた。
「ひいいぃ」
悲鳴をあげ、ついでに、地面のでこぼこに足をとられて、すっころぶ。
あらためて、周囲を見ると、あまりにも暗い。とても心細い。ハルゥは泣きたくなった。
けれど、泣くこともなく、ハルゥは歩き出す。
ガサガサ。
何か、大きなものが近づいてくるような音だ。
ガサガサガサ。
赤い三つの丸い明かりが見えた。風が吹き、枝を揺らして、月明かりが闇の中に割って入る。
ハルゥの倍はあろうかという巨体。三つ目のオーガーだ。
ハルゥは悲鳴を上げた。静寂をつんざき金切り声が響いた。
襲い掛かるオーガー。
ハルゥは悲鳴をあげながらも、オーガーに向かって片手を突き出した。
突進してきたオーガーの足元が爆発する。
それでもオーガーの勢いはとまらなかった。
「アルテナ様、お力を!」
ハルゥが、強く祈りをささげたとき、オーガーの体が真っ二つに割れた。
あっけにとられるハルゥ。ひとりの男が立っていた。
「はあ、せっかくいい夢見てたってのに・・・」
大きな戦斧を下げた大男だ。革鎧を小粋に着こなし、赤い髪は肩まで無造作に伸びている。
男は、大きなあくびをすると、そのままハルゥに背を向けて歩き出した。
「お、お待ちくださいませ」
男が振り返り、それから、また、大きなあくびをひとつ。
「あの、もし、よろしければ、街まで送ってもらえないでしょうか?」
「やだよ、面倒くせえ」
男は、お尻をぼりぼりかきながら、答えた。
「そんなことおっしゃらずに。お願いでございます、戦士様」
「戦士様、戦士様ねえ。いい声してるね、あんた」
ハルゥは、期待を込めて、男を見上げた。
「いいよ。その代わり、酒くらいおごってもらうぜ」
「ありがとうございます。あの、私、ハルゥ・ニイともうします。アルティータです」
「俺は、マイク・ロック。まあ、旅の戦士だな」
マイクは後にこう語る。この時のちょっとした善意が、生涯の過ちだったと。

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