サーダイン・エア
名前 | サーダイン・エア |
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年齢 | 18歳 |
身長 | 165cm |
体重 | 56kg |
職業 | 狩人(ハンター) |
性格 | 生真面目で、気が弱い。 |
優しき半魔
その村にたどり着いたときには、すでに日は沈んでいた。
人影は見えず、立ち並ぶ木造の家屋の窓からちらほらと明かりがのぞいている。
サーダインにとっては、好都合だった。
厚手のマントで、体をおおい隠し、フードを深くかぶってはいても、魔物と化した半身を見られてしまうのではないかという心配は、常に心の中にある。
できるかぎり、人目を避けて旅を続けたいのだが、食料や情報を仕入れる必要もある。
サーダインは、村の端っこに一軒だけある宿屋と酒場をかねた店へと向かった。
酒場には、頭がつるりとはげあがった店主が一人、グラスを磨いていた。サーダインに警戒したような目を向ける。
「酒はいい。・・・何か食い物を頼む」
銀貨をカウンターにのせる。主人がすかさず銀貨をひったくった。
主人が運んできたパンとサラダを食べながら、サーダインはいくつか質問をした。
光玉探しのための情報集めだ。多少の成果はあった。このあたりに伝わる光の塔の伝承を聞くことができたのだ。恐らく、その塔の中に、光玉は隠されているはずである。
「店先を借りる」
そういって、サーダインは外へ出た。宿屋の軒下にゴロンと寝転がる。長年の習慣からか、屋内ではどうも窮屈で落ち着かないのだ。しばらくそのまま、空を見上げていると、上から幼子が見下ろしてきた。おかっぱ頭の目の大きな少女で、興味津々とサーダインの顔をのぞいている。
(まずいな)
いまさらながらに手の平で顔を隠すサーダイン。少女が、手に持っていた毛布を差し出した。
サーダインはしばらく、それが何を意味するのか理解できなかった。それから微笑んだ。「ありがとう、助かるよ」
少女も微笑んだ。トタトタとかけていき、向かいの家へ入っていった。
(今夜は気持ちよく眠れそうだ)
サーダインは、穏やかな気持ちで、目を閉じた。
やがて、うつらうつら、してきたところ、遠くから馬のいななきが聞こえた。それもひとつではない、複数のいななきが重なり合うように聞こえる。
サーダインは、弓を手にした。攻撃的な臭いがする。
馬にまたがった者達が、奇声をあげながら、槍を片手に迫ってくる。どうやら野盗の類のようだ。
サーダインは、家屋の陰に身を隠した。人と争うのは得意ではない。
男達は、家々に押し入り、盗み、殺した。
いたるところで、悲鳴が聞こえる。
先ほどの少女が、髪をつかまれて引きずられている。耳をつんざく悲鳴が聞こえた。
ドクン。
眠っていたサーダインの左半身が脈動した。
「落ち着け」
諭すようにサーダインは左胸に手を置いた。
ドクン、ドクン。
だが、左半身は、再び眠るのをよしとせず、さらに脈動した。
ドクン、ドクン、ドクン。
(わかったよ。だが、村人は殺すな)
サーダインは、フードを上げた。爬虫類を思わせる緑色の左顔面。目は金色に光りを放っている。
矢筒から、五本の矢を取り出す。それらを弓に同時につがえ、放つ。
直後、闇夜に、幾筋もの線が走った。略奪をほしいままにしていた男達が、低いうめき声をあげて倒れる。
サーダインは、高く跳んだ。宿屋の屋根に飛び乗り、吠える。
夜空らに冴え冴えと輝く満月の元、サーダインは次から次へと矢を放った。
むせ返るような血の臭いがあたりに立ち込め、男達が次から次へと死んでいく。
その夜の殺戮は、野盗が死に絶えるまで永遠と続いた。